北欧 レポート


スウェーデン・ヨーテボリ在住の友子ハンソンさんより

「スウェーデンの新型コロナウイルス対策の現状と課題点」

について投稿していただきました

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■スウェーデンの新型コロナウイルスの対策の現状と課題点

やっと夏至祭が終わりました。先週はすごくお天気が良かったのですが、夏至祭の前夜祭あたりから、いつもように?天候がくずれ、雨になりました。昨日は、ひどい雨と雷で、何でしょうという有様でした。

夏至祭頃までにはなんとかコロナもコントロールできるのではと思っておりましたが、とんでもない!! これではいつまで続くのでしょうと、不安になります。スウェーデンは不思議な国で、税金が高いとか、いろいろ文句を言うわりには、安心して暮らしてきました。国が発表するコロナ状況とその対応にも、いろいろな学者の反対意見などもありましたが、私は、国の方針に完全に同意しておりました。ただ、方針をよく理解していない人達がいるのには驚きました。スウェーデンという国のコロナ対策は、“国民のコロナへの抗体保持者を増やす”ということが、第一目標ではなく、“スウェーデンの保険医療制度の維持”が何より最大の目標だったし、現在もそうであると理解しています。税金でまかなっており、必要な人がお金のあるなしに関係なく、医療を受けられるという制度の保持です。医療制度が崩壊してしまっては、どうにもならないという考え方で、今回のCV19との闘いは長期戦になるであろうから、短期完全ロックダウンをしないで、病人は引きこもり、最弱者の高齢者を保護する、というものでしたし、それは現在でも同じです。連日こういう政府の意図を発表してきましたが、なかなかそういう意図は理解されないので、驚いております。

1992年度のエーデル改革により、高齢者は病気ではないので、高齢者が大勢一緒に暮す施設はなくなり“高齢者住宅”が完成し、家庭らしい環境で、医師や正看護師が常勤しない、日常生活の場で、高齢者が個室で暮らしていました。日常ケアにかかわる職員は、准看護師と呼ばれる、高校でケア教育を受けた人達が主でした。そこでは、医師などはコンサルト形式で、医療機関のランスチング(県)から週に一度程度、施設にでかけますが、全員を診察するのではなく、必要な場合のみ、診察し治療するという方針をとってきました。

さらに、こういう現場で勤務する職員の人気が低いために、スウェーデンが受け入れている多くの難民にケア職を提供してきました。そうすることで、スウェーデン語の十分でない人達も、職場を通じて社会に統合され、スウェーデン社会を理解し、スウェーデン人になっていけるであろうという政策でした。こういったスウェーデンの移民/難民受け入れ政策は、突然大量の人々がスウェーデンに移入しないで、ある程度の数で、段々に移入してきたかぎり上手くいっていました。ところが、2000年代にはいり、急激に難民が増えるにつれ、難民を受け入れ統合していくことが、困難になってきました。

そこで、高齢者ケアの人材不足対策に、多くの働き盛りの難民に、職場教育などをし、高齢者ケアの現場で仕事してもらってきました。普通の生活援助には、十分な労力として、また、徐々に専門教育を受けることで、難民も有給の労働につき、スウェーデン社会に統合されてゆき、高齢者ケアでも人材が充填されてきていました。

ところが、そこに、思いがけなくCV19の世界的大流行が、スウェーデンを襲ってきました。スウェーデン政府のとった政策そのものは、私は間違っていないと信じていますが、一つ大きな誤算があったのは、もっとも保護しなければならない、慢性疾患のある後期高齢者が多く生活する、高齢者施設にCV19が発生したことです。CV19は、病原もはっきりせず、治療方法も予防接種もないままに、最弱者の多い、医療の専門知識の不足していた生活の場の高齢者施設に蔓延してしまいました。また、スウェーデンの病院は、緊急病院のみになっており、ドイツなどに継続して残っている、療養型病院がないということも大きな欠点だと思います。従って、施設または在宅で医療専門職でないヘルパーから援助を受けていた高齢者に病気の感染者も多く、施設入居していた高齢者の犠牲者が非常に多くなってしまいました。世界中からバッシングされることになった、スウェーデンの危険な賭けと言われる方針のもとで、CV19感染者や高齢者の死亡率が高まった要因がここにあると思います。

スウェーデンには約290の市自治体があり、この「市」が高齢者福祉の提供責任者です。ということは、この市自治体が、市内の高齢者入所施設の運営責任者なのです。現状、2020年6月15日で、234の市自治体の高齢者施設で、CV19が感染しているそうです。スウェーデン全体の死亡者約5000名中の約2500名が、施設で亡くなった方達。さらに、在宅でヘルパーを受けていた高齢死亡者も含むと、3400名程度が70歳以上の高齢者になると言われています。

確かに、悲しむべき多くの人達が、CV19の犠牲者になりましたが、北欧諸国中でも、スウェーデン人の海外旅行率は高く、とくにクリスマス/お正月の休暇中、2月上旬のスポーツ休暇中には、イタリア、オーストリア、フランスやスイスにスキーに出かけ、その他の国々にバカンスに出かける割合が非常に多く、CV19を持ち帰ったと言われています。

また、うがい、手洗い、マスクの着用の習慣のないスウェーデンでは、CV19が蔓延しやすかったのかもしれません。さらに、外国出身者に、CV19による死亡者や重症になる人達が非常に多いそうで、政府がその原因を調べています。それは、CV19に対する抗体が血液型のA型には少ないとか、スウェーデン人に多いO型は、CV19に強いとか、いろいろ言われています。一説によると、CV19は血液の病気であり、各血液型により、血液の形成細胞が違っているので、A型は、非常に攻撃されやすいとも言われています。そのうちに調査の結果が判明するとは思いますが、現状では、自宅勤務のしにくい職業についていたり、住宅状況が悪いために、狭い場所に多くの人達が一緒に住んでいたり、身体に触れることが多い生活様式が蔓延にむすびつきやすいとも言われていますが、CV19の正体が段々分かってきているようです。多言語の人達や、文盲者が暮らすスウェーデンでは、CV19への対処情報提供が十分でなかったことも国のミスであるとされています。スウェーデン語が正しく理解できず、注意事情がきちんと把握されていなかったので、自分は大丈夫と過信し、発病してしまった人達も多かったそうです。

CV19のコントロールに成功したと言われている、中国、韓国、オーストラリア、ドイツとあちこちで第二波の襲撃があるだろうと思われ、CV19の恐ろしさは、スペイン風邪以上の脅威?ではと言われていますが、早くワクチンが見つかることを祈っています。夏になれば、普通のインフルエンザでしたら下火になると思われてきましたが、まだまだ予断を許さない状況です。

個人的な感想も含んでおりますが、現状では、皆すこし意気消沈しているところです。チャーチルにでも出てきてもらわないとどうにもならないような気がします。

2020年6月 友子ハンソン記

★友子ハンソンさん 経歴★

外国商社の秘書を経て、結婚後、1983年よりスウェーデン・ヨーテボリ市に在住。2児の母で、翻訳、通訳などのフリーランサー。社会福祉関係、ヨーテボリ市公共関係の通訳などを専門に行なっています。

著書に「お母さんが子供になった」(訳/講談社)、「欧米の介護現場」(共著/一橋出版)、「私にもできる」(訳/萌文社)、「症状が重くなった方が介護が楽になる」(訳/北欧社会研究会)、「スウェーデンからの報告」(共著・訳/筒井書房)、「スウェーデンにおける施設解体」(共著・訳/現代書館)、「家族に潜む権力 スウェーデン平等社会の理想と現実」(共訳/青木書店)、「今、なぜ痴呆症にグループホームか」(共著・訳/筒井書房)など多数あります。高齢者福祉に関しては、他に類を見ないほど丁寧な通訳で、分かり易く通訳してもらえます。 

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