北欧 レポート(スウェーデン)


「既に問題のある高齢者住宅(高齢者向けの入所施設)が、コロナウイルスによる被害を最も強く受けている」

「Svenska Dagbladet紙(2020年8月17日)」

翻訳:友子ハンソンさん

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すでに問題がある高齢者住宅(高齢者向けの入所施設)が、コロナウイルスによる被害を最も強く受けている

コロナウイルスの猛威により多大の被害を受けている市自治体の多くでは、どちらかというと高齢者住宅での居住期間が短くなっている。スウェーデンでは、これらの高齢者住宅に転居してきた高齢者の居住期間は、その入所日から死亡するまで平均して約2年だ。しかし、コロナウイルスの猛威による影響を多大に受けている市自治体では、居住期間が平均より短いところが殆どだ。

スウェーデンの各市自治体では、市内の高齢者住宅に入所した高齢者の居住日数を調べなければならなくなった。それは、スウェーデン国内の各市自治体での、高齢者住宅の滞在中位日数を比較するためだ。カロリンスカ研究所のパール・シューン高齢者部門研究者は、滞在中位日数が低い自治体の場合は、市内の高齢者住宅で暮らす高齢者が虚弱で短期間で亡くなる人が多いということを示していると語っている。高齢者住宅内のある一定の部屋を、要介護度の高い非常に虚弱な高齢者のみを対象としている施設もあるからかもしれないとパール・シューン研究者は語っている。

「市議会の議員が悪いという意味ではありません。私自身は、市議会の議員などにはなりたいとは全然思いません。実際は、予算がないというのが現状だからです。」と、パール・シューンは語っている。

コロナウイルスの大流行により大きな影響を受けた市自治体の多くでは、その高齢者住宅での滞在日数はどちらかというと短期間になっている。IVO(看護と介護に関する監査機関)によると、2019年度のスウェーデンの緩和ケア登録によると、40の市自治体が、とくにCV19により大きな打撃を受けており、そのうちの28の市自治体では、その高齢者住宅の滞在期間が、スウェーデン全体の中位滞在期間の2年間よりも短くなっているとのことだ。

市自治体によっては、その高齢者住宅を特別に重度の虚弱高齢者を対象としていることもあるので、この伝染病の大流行により特に打撃をうけた理由でもありうると、社会庁の国民健康部門のイレーヌ・ニルソン=カールソンが語っている。

「居住者がいかに病弱虚弱だったかによるかもしれません。しかし、それだけではない、その他の理由もあったと思えます。ある一つの市自治体が特に打撃を受けた際には、その市全体におけるコロナウイルスの蔓延にも影響を受けたとも言えましょう。」と、イレーヌ・ニルソン=カールソンが語り、衛生管理に関する規則が徹底していなかったことも指摘している。

打撃を受けた市自治体の一つがストックホルム市で、高齢者住宅でのCV19による死者数が大きかった。ストックホルム市では、高齢者住宅での滞在期間は平均して1.5年だ。高齢者研究者のパール・シューンは、スウェーデンの首都の高齢者住宅の変異を研究してきたが、近年ますます重度の病弱虚弱高齢者が入所するようになってきたと述べている。

研究の一つで、パール・シューンは、ストックホルム市内中心地のクングスホルメン区の高齢者住宅に入所した高齢者の滞在日数を調査した。その調査によると、2006年度には、滞在日数85日であったのに比較して、2012年度には10分の1が入所後たった8日間で死亡していた。

「これは、高齢者住宅数を減少させた結果で、国内の多くの市自治体で同様な傾向が見られます。国内のすべての市自治体が同じようなことをしたと思いますが、減少のレベルが違っていると思います。市自治体によっては、高レベルな状況からの減少でしたが、場合によっては、低レベルからの減少もありました。」と、パール・シューンは語っている。

パール・シューン研究者によると、多くの高齢者が在宅でケアを受けているので、スウェーデンの高齢者ケアの現場は、より病弱な高齢者のお世話をするようになってきているとのことだ。在宅でケアを受けている高齢者は、親族やホームヘルプ部門からの支援を受けていることが多いが、こういったケア形式は、施設型ケアよりもずっと安価だ。2018年度の社会庁の報告によると、ホームヘルプ部門によるケアに必要な経費は、1年間で約29万9000クロノール(2020年8月現在 日本円で約420万円)だが、高齢者住宅での施設ケアに必要な経費は1年間で平均約87万1000クロノール (日本円で約1220万円)とのことだ。

「節約しなければならない場合は、スウェーデンで最もお金のかかるケア形式の高齢者住宅を閉鎖していくのです。」と、パール・シューンは語っている。

FAKTA; 高齢者住宅の中位滞在(ケア)日数

滞在日数(ケア日数)報告は、死亡ケースが発生した段階でなされ、一人の高齢者が高齢者住宅に入所した日から死亡した日まで何日間滞在したかで計算される。中位ケア日数は、1年間で亡くなった高齢者数の中間の数字を示している。高齢者住宅に暮らしている高齢者が、終末期に緊急病院に入院していて死亡した場合は、高齢者住宅でのケア日数統計には含まれない。

この統計数は、スウェーデンの緩和ケア記録に集計され、自発的な報告をベースにしている。これらの記録は、スウェーデン全体の、公共と民間を含むすべての高齢者住宅での死亡者数全体の約80%に相当する。

スヴェンスカダーグブラーデッド紙 https://www.svd.se/

2020年8月 友子ハンソン訳

★友子ハンソンさん 経歴★

外国商社の秘書を経て、結婚後、1983年よりスウェーデン・ヨーテボリ市に在住。2児の母で、翻訳、通訳などのフリーランサー。社会福祉関係、ヨーテボリ市公共関係の通訳などを専門に行なっています。

著書に「お母さんが子供になった」(訳/講談社)、「欧米の介護現場」(共著/一橋出版)、「私にもできる」(訳/萌文社)、「症状が重くなった方が介護が楽になる」(訳/北欧社会研究会)、「スウェーデンからの報告」(共著・訳/筒井書房)、「スウェーデンにおける施設解体」(共著・訳/現代書館)、「家族に潜む権力 スウェーデン平等社会の理想と現実」(共訳/青木書店)、「今、なぜ痴呆症にグループホームか」(共著・訳/筒井書房)など多数あります。高齢者福祉に関しては、他に類を見ないほど丁寧な通訳で、分かり易く通訳してもらえます。 

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