北欧 レポート(イタリア)


4.3.ケアホーム

4.3.1.COVID-19感染症の予防

イタリアのケアホームにおけるCOVID19感染の予防は、特に初期のウイルス拡散段階では不十分であった。

 

「最初の罪」はLTCシステムの軽視であった。国の機関がCOVID-19のパンデミックが市民の健康に対する深刻な脅威であると認識した瞬間、国民の関心は主に急性期病院に向けられた。COVID-19の最も脆弱な標的集団の一つであるケアホームには潜在的なリスクがあるにもかかわらず、ケアホームにはほとんど注意が払われなかった。3月9日の国の全面的な監禁後に、ケアホームの初の運営ガイドラインが発表され、居住サービスの面会停止のみが義務付けられた(一部のケアホームでは、この日以前に自律的に外部からの面会を停止していた)。その結果、虚弱な高齢者は、少なくとも3週間は社会的距離を置くための制限も隔離もないまま、陽性かもしれない無症状の可能性がある訪問者にさらされることになった。国レベルでは、ケアホーム向けの運営指針の更新が保健省から3月25日にやっと発表されたのに対し、一般住民に対する初の施策は2月22日に制定されている。国レベルに続き、ほとんどの地域(LTC部門の業務規制担当)では、発生から1カ月以上が経過した時点で、COVID-19管理の初のガイドラインを発表、推進しはじめた。

ロンバルディア州は、3月8日に、軽症のCOVID-19陽性患者を受け入れるための「適切な」構造的要件(個室を確保することを意味する)と組織的要件を満たした老人ホームの特定を、地元の保健当局(ATS)に依頼するなど、唯一行動を起こした州である。このような運営指針の発表は、介護スタッフと患者の双方にとってリスクが高いことから、介護事業者とその代表者の双方から強い反発を受けていた。このため、この措置が実施されたのはごく一部のケースであった。

 

4 月 26 日、イタリア政府は、ケアホームに向けた新しい政令を発表した。外部からの訪問者は、各組織の臨床部長の決定に基づいて受け入れることができるようになった。

4.3.2施設内に感染者が出た後の感染拡大の制御

ケアホームでのCOVID-19の蔓延防ぐために追跡、コントロールすることは不可能で、陽性を疑われる入居者や介護職員を検査することもできなかった。現在でも、現状のガイドラインでは、ケアホームの入居者や、症状が出た後病状が落ち着いた入居者を検査することは想定されていない。これは、上記のようにCOVID-19に関連した実際の死亡者数に関するデータの正確性を危うくしている。ISSの報告書によると、COVID-19陽性者のほとんどは、入院せずに老人ホームで治療を受けており、4月28日現在、ケアホームの入居者を対象とした本格的な検査活動は計画されていない。

4.3.3.COVID-19を有する住民のヘルスケア(緩和ケアを含む)へのアクセスの確保

イタリアでのコロナウイルスCOVID-19の感染拡大の間、ケアホームは実際、他の医療システムから隔離されていた。COVID-19の患者がピークを迎えたことでプレッシャーを感じていた多くの州(ロンバルディア州、ヴェネト州、エミリア=ロマーニャ州、マルケ州、ピエモンテ州など)の病院は、COVID-19の可能性のあるケアホームの住民の入院を拒否するようになった(すべての人を対象とした検査ができなかったため、症状に基づいた評価になっていた)。その結果、重症度の高い状態に対応していない施設や、病院のように専門的な医療従事者が不足している施設で療養されることが多くなった。また、緩和ケアへのアクセスは、ケアホームの患者だけでなくすべての人に非常に重要である。緩和ケアと集中治療室の医師を代表する団体(SICP、SIAARTI、FCP)は4月3日、COVID-19患者のための具体的な手順を求めるプレス声明を発表した。

4.3.4.スタッフの可用性とウェルビーイングの管理

もう一つの関連する問題は、ケアホーム従事者を含む長期介護サービスのための個人用保護具(PPE)の不足であった。イタリアでは、マスク、検査、ガウンの膨大な不足に直面し、社会と医療従事者に深い影響を与えていた。新しいPPEの供給は主に病院に向けられ、ケアホームはスタッフや入居者を保護するための適切な装備を見つけるのに苦労していた。ロンバルディア州では、ケアホーム向けのマスクの最初の供給が3月12日に到着したが、実際のニーズをカバーするには不十分であることが判明した。ISSの調査では、感染拡大の主な問題は、感染拡大抑制のためのガイドラインの弱さ、医薬品の不足、介護職員の不足、陽性の患者を速やかに病院に移送することの難しさに関連していると報告されている。これらすべてが、LTCサービスでのウイルスの拡散を促し、その結果、信じられないほど多くの入居者と介護職員の感染者数と高い死亡率が発生することになった。

4.4.地域に根差したケア

4.4.1.無給介護者への影響と支援策

インフォーマルケアは、イタリアの長期介護システムにおいて大きな関連性を持っている。COVID-19緊急事態の前に、研究者(ベロルトとペロッペリ2019)は、800万人以上のインフォーマルケアラーが家族のケアを提供したと推定している。また100万人以上の有給介護労働者のうち、60%は専門的な契約または正式資格なしでケアをしていると推定している。イタリアでは、これらの介護者は「バダンティ」と呼ばれ組織化されておらず、長期介護システムを担っている。典型的には、これらの非正規(雇用契約なし)介護労働者は、女性、40歳以上、イタリア人ではなく東欧や中米の国々の出身者が多く、多くの場合、EU滞在の法的許可もなく、専門的な訓練も受けておらず、介護を提供する人々と一緒に生活することで24時間365日の介護を提供している。何かの時の補償やサポートは、いくつかの地域の例外を除いて、国で認めていない非公式の介護者のため、なにもない。

 

COVID-19の出現は、インフォーマルな介護システムに多大な影響を与えた。市町村と地域のソーシャルディスタンスやロックダウンは、当初、介護を必要とする人々とその同居していない介護者(家族)とのつながりを全てなくした。第一期の後、介護する人など例外的に一部の人々が移動できるようにするため、要介護者を持つ家族への許可が追加された。しかしメディアによると、介護者は、介護する人のために食料や薬を購入するための店舗への入店優遇がされていないため、大きな問題に直面していると報じられている。4月30日現在、インフォーマルケアラー(家族)に関して、国や地域レベルでの具体的な措置は取られていない。

同様に、正規・非正規の介護労働者については具体的な対策がとられている。メディアによると、彼らの大多数は単に仕事を失った(つまり、ロックダウンによって全体の30%の家族が要介護者のケアを行い、訪問しないもしくは出来ないケースが出てきている、とメディアは報じている)か、感染予防に関する研修やPPEを持たずにケアを提供するために場所を転々とし続けている。そのためCOVID-19の感染拡大の一因と思われ、また彼らの多くは非正規労働者であるため、収入が減少もしくはなくなっている。4月30日現在、この問題は政治的な議論に入っており、正規化を広めるための可能な対策が検討されている。

4.4.2.障害者に対する対応

国は3月17日、すべての障害者通所介護施設の閉鎖を決めた。地方の保健所は、LTC通所介護事業者と連携して、高度な集中ケアを必要とする障害者に対して、「延期できない」ケアのための訪問を行うことができるとした。前提条件は、ケア提供者が十分な安全対策を保証できることである。規範は、「延期できない」とされるケアが何であるかを規定しておらず、最終的な決定は地方の保健当局に委ねられている。

 

在宅ケアに関しては、同法では、地方自治体は、介護者と利用者の両方を適切に保護できる場合に限り、訪問介護を保証しようとしなければならない、と定められている。介護者は、必要な場合にのみ障害者を訪問するために、ロックダウンの規則を逸脱する場合がある可能性がある。

 

全国障害者支援室は、そのウェブサイトにCOVID-19に関連して「よくある質問」への回答を掲載した。知的障害者に関するものとして、ANFASS(全国知的・関係障害者協会)は、介護者や家族のために、緊急時やストレスにどう対処するかについてのガイダンスを公表した。

 

4月30日現在、国の介護支援策は、柔軟な勤務形態に関するものが中心となっている。全国障害者協会(FISH)は、サービスの提供と経済的介入の両面から、障害者やその家族が緊急事態時に取り組めるガイダンスの作成を、より強く求めている

4.4.3.認知相とともに生きる人への影響と支援策

イタリアでは、認知症の人が自立した生活ができない場合、デイケアセンターやケアホーム内の認知症専門棟で治療や支援を受けることが主になっている。一4月30日般的にCOVID-19以前も、在宅での具体的な支援策は少なく、地域レベルでしか推進されていなかった。全国の患者会は、COVID-19の危機が認知症の人の支援に影響を与えたと報告している。3月8日以降、大半のデイセンター(公私とも)が閉鎖され、代替手段が提供されていない。同様に、存在していた在宅介護活動も中止された。4月30日現在、現在、国や地域レベルでの具体的な取り組みもいまだ行われていない。在宅介護が必要な人の社会的交流やモニタリングを促進するための技術の普及を推進する全国アルツハイマー病患者団体(AIMA)など、他の関係者によって推進されてきた取り組みもある。他の協会では、介護者を支援するためのコールセンターを推進している。

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著者

サラ・ベルロト Dr. Sara Berloto(ボッコー二大学ヘルスアンドソーシャルケアマネジメント研究所ジュニアリサーチフェロー・経済学博士)

エリザベッタ・ノタルニコラ Dr. Elisabetta Notarnicola(同大学 社会政策サービス管理コーディネーター及び准教授・行政学及び経済学博士)

エレオノーラ・ペロベッリDr. Eleonora Perobelli(同大学 ジュニアリサーチャー・経済学博士)

アンドレア・ロトロ Mr. Andrea Rotolo(同大学 リサーチフェロー・アフェリエイト)

2020年4月30日

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