北欧 レポート(日本)

4.2.3.スタッフの稼働率とウェルビーイングの管理

介護保険の適用を受けるすべての介護事業者は、厚生労働省が定めた国の人材配置指針を遵守することが義務付けられています。厚生労働省は監督官庁として、老人ホームで発生する可能性のある人手不足を懸念しています。そこで、2020年2月17日の段階で、コロナクラスター等で人材不足になった施設に介護職員の派遣要請が必要な場合は、都道府県に協力するよう、介護事業者に連絡しました。

都道府県は、人員不足への対応を含む具体的なパンデミック対策の実際の計画・実行を任されました。4月30日に成立した国の第一次補正予算では、都道府県が介護事業者との連絡や人員不足の解決策を作るための事務コストを補うための補助金が盛り込まれました。取材を行った神奈川県では、2020年5月26日に人材派遣システムを立ち上げています。厚生労働省は6月20日、他の都道府県の参考となるよう、新たに人材派遣システムを導入した山梨県、富山県、兵庫県の情報を共有する案内を、他の都道府県に送付しました。

介護職員の健康管理については、国の第2次補正予算(2020年6月12日成立)に介護職員向けの相談窓口を設置するための資金が計上されました。2020年8月には、老施協がそのサービスを開始しました。しかし、現在に至るまで、政府主催の介護従事者向けアンケートは把握していません。

また、国は介護職員に対し、入居者やサービス利用者との接触状況に応じて、およそ5万円から20万円の慰労金を支給することを決定しました。

4.2.4.COVID-19の期間中、ケアホームでの健康管理と緩和ケアの提供

介護保険適用施設(i)~(vi)は、引き続き介護を提供しています。

4.3.地域密着型ケア

介護保険制度の概要で紹介したように、日本の正規の在宅介護部門は、デイケアと訪問介護に大きく依存しています。デイケアの場合、そのサービスの性質上、居住施設のような「閉鎖」措置をとることができません。利用者への感染を恐れて、多くのデイサービス事業者はサービスを停止しました。

全国老人福祉施設連盟が2020年4月に実施した調査によると、通所介護事業者の82%がサービスの停止・縮小により事業収入が減少したと回答しています(全国老人福祉施設連盟2020)。2月時点の厚生労働省の見解は、コロナ流行に直面したデイサービス事業者はサービスを停止し、利用者を在宅介護サービス事業者に紹介すべきだというものでした。同省は、都道府県や政令指定都市の自治体には、サービスを停止する権限があるとしています。しかし、多くの在宅サービス事業者がサービスを縮小しているため、言うは易く行うは難しでした。また、前述の調査では、利用者やその家族の多くが、感染症を恐れてサービスを中止したと報告されています。4月から5月にかけて、厚生労働省は訪問系通所系の介護事業者の経済的問題を認識し、その本格的な稼働に向けた経済支援に政策の重点を移しました。そこで、2020年6月に成立した第2次補正予算では、介護サービス事業者がサービスを再開できるよう、経済的支援策を盛り込みました。

(住宅型有料老人ホームは、ホームとして介護保険サービスを提供する認可を受けていません。また、介護サービス提供の認可を受けている場合でも、認可を受けた在宅介護サービス事業者と契約する必要があります)。

4.3.1.COVID19の感染拡大防止策について

効果的な予防策もあまりありませんでした。認知症の利用者が多いデイケア事業者の多くは、サービスの縮小に踏み切りました。国はデイサービスを在宅サービスに置き換えることを推奨しましたが、それが効果的な代替策となったかどうかは定かではありません。医師や看護師が監督し、予防・管理策を実施する専門委員会がある入所施設とは異なり、在宅サービスは個人宅で行われます。そのため、在宅サービス事業者が環境をコントロールすることは非常に困難です。そのため、広島県三次市のように、在宅介護の脆弱性が露呈してしまったのでしょう(3.3節で詳述)。

第2次補正予算(2020年6月)では、訪問系・通所系介護事業者が予防・管理対策の改善策を提言するために外部専門家に依頼する際の補助金が新たに盛り込まれました。また、この予算では、介護事業者が個人用保護具やその他の必要な作業環境の改造にかかる費用を一部負担しています。

4.3.2.潜在的なサービスの低下を補うための措置

第2次補正予算(2020年6月)では、在宅介護サービス事業者のサービス提供再開を支援するための補助金が導入されました。介護セクターのこの分野は、パンデミックによって経済的に最も大きな打撃を受けました。また、多くの家族にとって必要不可欠なサービスです。介護事業者への経済的支援は別として、困っている家族への支援プログラムはありませんでした。

4.4.無償介護者への影響とその支援策

前述したように、日本では多くの高齢者がデイケアや訪問介護に頼っています。多くの高齢者は、自分の身内などのインフォーマルケアと専門家が提供するフォーマルケアを組み合わせて家族と暮らしています。コロナウイルスの予防と制御がはるかに困難であったため、インフォーマルケアの介護者(家族等)を支援する政策がとられてこなかったのです。

4.5.認知症の方への影響とその支援策

まだ発表されていない継続的な研究があります。日本老年医学会と広島大学が共同で行った調査によると、デイケアや訪問介護を中断すると、78.7%の介護事業者が認知症の人の認知能力がさらに低下すると回答しています。また、38.1%の人が、専門的な介護サービスが停止した結果、余分な介護を負わされた家族の精神的、肉体的、経済的負担を指摘しています。

5.これまでに得られた教訓

5.1.短期的な行動喚起

・感染の予防と制御のためには、介護職員と利用者の検査が必要です。

・日本の介護施設では、ウイルスの蔓延を抑えるための主要な対策として、ロックダウンに頼りすぎていました。また、高齢者の認知機能や身体機能が低下しているケースを多く耳にします。ロックダウンの悪影響の度合いを調査し、その回復策を研究することが急務でしょう。


・伝染を恐れて訪問介護やデイサービスの利用を中断する家庭も多くいます。パンデミックは、家族介護者(インフォーマルサービス)と専門介護者(フォーマルサービス)を精神的・経済的困難にさらすものでした。このパンデミックが、さまざまなタイプの介護者や高齢のサービス利用者に与えた影響を調査することが、緊急に必要です。


・日本政府は、パンデミック関連の基本的な情報を収集・処理する能力がないことが際立っています。例えば、日本では、毎週の死亡率データを公表するまでに数ヶ月を要します。介護施設やデイケア、在宅介護サービスの利用者における陽性患者数に関する政府のデータもありません。政府は、この点での失敗を一部認識しているようです。補正予算では、病院、自治体、国の省庁の間でデータ共有システムを構築するための資金が提供され、政府はCOVID-19患者数の変化をリアルタイムでよりよく監視できるようになりました。これは歓迎すべきことです。しかし、介護施設における陽性患者数の収集のような作業は、介護セクターに関する規制システムが階層的に構成されている日本のような国では、それほど難しいことではないはずです。情報は上から下へ(厚生労働省から個々の老人ホームへ)非常に効率的に伝達されるので、下から上への陽性例の報告を義務付けることは、複雑なシステムを作ることなく、可能なはずでしょう。

5.2.長期的な政策への影響

今回のパンデミックは、日本の介護システムの最も脆弱な部分を明らかにしました。特に、日本の介護システムの2つの特徴が、SARS-COV-2の感染に対して非常に脆弱であることが証明されました。ひとつは、デイケアと在宅介護に依存していること、もうひとつは、居住型と非居住型の両方の介護サービスを提供する介護施設の数が多いことです。一人の利用者が複数の事業者のサービスを利用する可能性があるため、これらの特徴により、同一の感染者または介護従事者に曝露される可能性のある人の数が劇的に増加します。(本報告では、1人の感染した利用者から間接的に感染した380人が検査を受けた広島のケアホームを取り上げています)。デイケアや在宅サービスにおける予防と管理はより困難であり、日本は実行可能な解決策を見いだせずにいます。日本政府は、居住型ケアよりもコミュニティケア(デイケアや在宅ケア)の拡大を計画していることを考えると、政府はより効果的なパンデミック対策戦略を打ち出さなければならないでしょう。

元記事はこちら2021

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